一線を越える夜

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「藤堂、料理は?」 「一応できる。」 「腹が減った。」 そういうことか。 早速、俺に作らせる気だな。 いつもなら言い返す所だが、これからこの家に住まわせてもらう以上、俺に文句を言う権利はない。 「冷蔵庫のもの使うぞ。」 「ん。」 俺はキッチンに向かい、立派な冷蔵庫を開けた。 だが、立派なのは外観だけ。中身は酒しか入っていない。 「何もないじゃないか。」 「俺、家で食事しないから。」 「いつも何食べてるんだ?」 「外食とか、会食もあるしな。帰りが遅いと食べずに寝たり。」 「そんなことしてたら、身体壊すぞ。」 「あれ?藤堂、俺の心配してくれてる?」 「社長が倒れて、給料がもらえなくなったら困るからな。」 「なんだ、金かよ。」 そういうと、宝条は服を着て、俺の元までやってきた。 「今日は食べに行こ。そのあと、宝条の荷物取りに行くぞ。」 「今日!?」 「お前の気が変わらないうちに。ほら、早く支度しろ。」 俺は藤堂と過ごす前途多難な日々に頭を抱えた。
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