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同居生活で口説かれる!?
マンションの地下駐車場には、高級車が何台も停まっていた。
そのうちの1台に宝条と俺は乗り込んだ。
「藤堂の車は?」
「手放したよ。俺には、高級車を所有する余裕はもう無いからな。」
数年前まで、予想もしていなかった。
父の会社が倒産し、路頭に迷うなんて。
それまで、自分がいかに金を無駄遣いしていたかを今になって思い知らされる。
俺は車の窓から外を眺めた。
これから俺の人生はどうなってしまうのだろう。
かつてのライバルと関係を持ち、その相手と同居する。
全く笑えない。
「なぁ、いい加減その顔やめれば?」
「俺は元からこの顔だ。」
「違う、俺の隣だと眉間にしわよってる。」
宝条はそういうと、俺の眉間に手を伸ばした。
「おい、運転中だろ!」
「藤堂は前から俺の前で笑わないよな。」
宝条の表情が一瞬、寂しそうに見えたのは気のせいだろうか。
「昨日はあんなに可愛かったのに。」
「お前な/」
「んはっ、その顔の方がいいよ。耳まで赤い。」
「言ってろ!/」
前言撤回。
宝条はこういう奴だった。
俺が笑わないだけで、寂しく思うわけがない。
俺は運転する宝条の横顔をちらっと見た。
悔しいけど、顔だけはいい。
それが余計にむかつく。
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