喰うか喰われるか

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「ネクタイ曲がってる。」 「苦手なんだよ。」 「それなら、俺が毎朝やってやろうか?」 「結構です。」 「相変わらず、素直じゃないな。」 「あの、離してもらえますか?仕事するので。」 「断る。やっと、藤堂が俺の隣にいるのに。この日を俺は何年待ち望んだことか。」 宝条の言葉に、一瞬、ときめいてしまった自分に呆れる。 甘い言葉の後には、必ず、鞭が来る。 他の人は騙せても、俺は騙されない。 「こんなに楽しいおもちゃは、どこ探してもないからな。」 ほら、やっぱり。 宝条は悪戯な笑みを浮かべながら、俺を見つめた。 この男は最低だ。 俺を傍に置き、自分勝手に弄ぶ。 その証拠に、ゆっくりと宝条の唇が近づいてきた。 しかし、寸前の所で俺は顔を横に逸らした。 「キスくらいいいだろう。減るもんじゃないし。」 「駄目です。そんな暇があったら仕事してください。」 「藤堂が仕事モードに戻った。つまんねぇ。」
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