34人が本棚に入れています
本棚に追加
「ネクタイ曲がってる。」
「苦手なんだよ。」
「それなら、俺が毎朝やってやろうか?」
「結構です。」
「相変わらず、素直じゃないな。」
「あの、離してもらえますか?仕事するので。」
「断る。やっと、藤堂が俺の隣にいるのに。この日を俺は何年待ち望んだことか。」
宝条の言葉に、一瞬、ときめいてしまった自分に呆れる。
甘い言葉の後には、必ず、鞭が来る。
他の人は騙せても、俺は騙されない。
「こんなに楽しいおもちゃは、どこ探してもないからな。」
ほら、やっぱり。
宝条は悪戯な笑みを浮かべながら、俺を見つめた。
この男は最低だ。
俺を傍に置き、自分勝手に弄ぶ。
その証拠に、ゆっくりと宝条の唇が近づいてきた。
しかし、寸前の所で俺は顔を横に逸らした。
「キスくらいいいだろう。減るもんじゃないし。」
「駄目です。そんな暇があったら仕事してください。」
「藤堂が仕事モードに戻った。つまんねぇ。」
最初のコメントを投稿しよう!