一線を越える夜

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「あはははっ、さすがだよ。藤堂。お前はそうでなくちゃ。期待を裏切らないでくれてありがとう。」 「調子に乗るな。俺は帰る。」 「もうそんな時間か。今日はお開きにしよう。」 宝条の一言で、社員たちは足早に店を出ていった。 酔っ払い男も同僚に連れられて帰っていった。 気がつけば、その場に俺と宝条しか残っていなかった。 「帰るのか?」 「ああ。」 「どこに?」 宝条は俺に問いかけた。 「どこだっていいだろ。」 「女か?それとも男?」 「だとしても、宝条にいう理由はない。」 実の所、今、俺は友達の家に居候している。 買収が決まった時、住んでいた家を売り払い、両親は父親の実家に引っ越した。 俺も着いていくことになっていたのだが、宝条が俺を雇うと言い出した。 そして、今に至る。
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