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「まぁいい。もう1件付き合え。」
「嫌だ。」
「その割には、顔は嫌そうじゃないけど?」
「うるさい。」
宝条に知られる訳にはいかない。
俺が彼に抱いている気持ちを。
本当は2人きりになれて、嬉しいと思っていることも。
「ほら、行くぞ。」
会計を済ませた宝条が振り向いた。
その瞳には俺が映っているのだろうか。
俺が立ち止まっていると、宝条が俺の手を握った。
俺はその手を咄嗟に振り払った。
「ひとりで歩ける。」
「あっそう。」
俺は宝条の背中を見つめた。
この背中に抱きつきたい。
なんて、言えるわけがない。
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