新約ピノッキオ

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 授業を担当していた先生が、二人が入ってきたことに気がつくと、わざわざ教卓の前に呼び寄せて二人を叱責した。ドリーはまるで見せしめにされている気分だと思った。同時に少し不可解な点が浮かび上がった。授業はいつも通りに進行しているようだ。この教室にいる人間はまだ、リロイが殺されたという事実を知らされていないのだろうか? それだけじゃない。ピノもこの場にいないし、自分達を含めて合計四人の生徒が教室に戻ってきていなかったにも拘らず、通常通りに授業を進めるなんて少し変じゃないか?    そう考えて、ドリーは教卓側から教室の様子を一瞥した。  そして、目を見張った。リロイの席に、彼が――リロイ自身が座っていたのだ。死体などではなく、彼は他の生徒に紛れて確かに座っていた。動いていた。息をしていた。  一瞬ではあるが、ドリーと目があったリロイは笑っていた。それは暴力的ではなく、他の生徒がみせるような優しい笑顔だった。ドリーは何かを確認するように自分の鼻を搔いた。
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