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昼休みだった。昼食を終えたドリーが、転入してすぐに注文しておいた刺繡入りの体操服を、購買部に受け取りに向かったときのことだ。購買部は学舎の一階にある為、ドリーは二階の教室を出てすぐに階段を下りた。その際に、広い踊り場で一人の少年が他の生徒に囲まれているのを目にした。好奇の目を向けられたうえで囲まれているドリーとは少し違う様子である。明らかに詰め寄られている少年は暗い顔をしていて、驚くことに、鼻の先がまるでキュウリのように伸びていた。
ドリーは思わず目を擦った。そして首をふって少年を見直した。だがやはり彼の鼻は伸びていたし、なんならドリーが目を凝らしている間もなお、植物みたく伸び続けているように見えた。
「あれは?」とドリーは自分を取り巻く生徒に尋ねた。
生徒は一瞬ドリーが指す「あれ」が何のことか分かっていないような表情を見せたが、ドリーの視線の先を見て、すぐに理解した様子で答えた。
「ああ、ピノのことか」
「詰め寄られているみたいだけど、いじめ?」
ドリーが訊くと、生徒はかぶりを振った。
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