0人が本棚に入れています
本棚に追加
生徒の話によるとピノはラッツオという生徒が彫った人形だそうだ。経緯は分からないが、ラッツオのつくる人形は生物のように生きるらしい。そうして生まれたピノは、ラッツオの手に余るほどの嘘つきだった。度々嘘をついて他の村人たちを困らせたもんだから、ラッツオはピノが嘘をつくと鼻が伸びるようにと、鼻だけを彫り直したら本当に伸びるようになった……という御伽噺みたいな話が、ピノの鼻の正体だそうだ。
もちろんドリーは、ピノの鼻を実際にみたとはいえ、生徒から聞いた話には半信半疑だった。しかし、それが事実だと信じ込まざるを得なくなるのに時間はかからなかった。理由としては、生徒の話に登場したピノとラッツオという人物が、ドリーと同じ教室にいたからだろう。
転入生という特別感が薄れてきた頃合い。ドリーには周りを観察する余裕が生まれ、ピノの鼻が伸びる様子を目にする機会が増えた。それに伴って気づいたのだが、同じクラスにいたリロイという少年は、ピノのことが気に食わないらしい。彼は度々ピノに詰め寄っていた。
「てめぇ、また嘘をついたな? さっき俺の椅子を蹴ったろう」
最初のコメントを投稿しよう!