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息子が魔族に殺された。
それを知った時、ドテナは目の前が真っ黒に塗りつぶされていくのを感じた。
「大変、申し訳ありませんでした」
目の前の魔族の男は、ドテナに向かって深く深く頭を下げている。
その隣にいる魔族の少年は、青ざめた顔で目を見開いたまま、微かに震えるだけで何も言わなかった。
それは本当に思いがけない事故だった。
魔族の少年の魔力が暴走して、それにドテナの息子が巻き込まれたのだ。
通常、幼い魔族は魔力が制御できるまで、結界の中で過ごす。上手く制御できないまま外に出ると危険だからだ。
魔族の少年はそれを知っていながら、理解していなかった。
ちょっとくらいなら大丈夫だろう、と、こっそり抜け出して遊びに出ていたのである。
そこでドテナの息子と出会い、一緒に遊んでいた。それだけだった。
魔族は感情で魔力が暴走しやすい。それが、怒りでも喜びでも悲しみでも。
魔族の少年に悪意はなかった。
だが、ドテナの息子は死んだ。
ドテナは、自分が深い沼の中にゆっくりと沈んでいくような心地がした。
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