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普通の奴なら気を失うが、喧嘩慣れしている田中は、数歩後ろに下がっただけだ。 「笹木が居たから俺の青春は輝いた。 今までサンキューな」 そう言って笑った田中の肩を軽く叩いて、その場から離れる俺。 もう2度と田中とやり合う事もないんだと思うと、込み上げてくるモンをグッと堪えた。 田中が居たから、俺の心は満たされていたと今なら分かる。 そんな俺も、7月になれば、20になる。 やりたい事は、まだ見つかっていない。 だからと言って父さんに頼る気もない。 なんて思う俺は知らなかった。 20の誕生日の日に、俺の人生を変える年下の奴に出会う事になるとは……
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