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『……俺は父さんに負けねぇように、祖父ちゃんと祖母ちゃんを守らないとな』 16の時に父さんに言った言葉に嘘偽りはなかった。 家に居る事にさえ、息苦しく感じる様になったのは、いつからだ? 田中が俺の前に現れなくなってから、自分の中でそんな風に思う俺が居る事に気づいた。 大学に通うのは、祖父ちゃんと祖母ちゃんの気持ちを優先させただけ。 祖父ちゃんと祖母ちゃんから、大事にされている事は、自分なりに理解している。 だが、違うんだ。 祖父ちゃんと祖母ちゃんが思う俺の未来と俺が悪い描く未来が。 だからと言って、何になりたいかも分からないし、夢さえもない。 「自由になりてぇな」 気がつけば、そんな言葉を呟いていた。
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