黒の豹 2024年版

（２）

「俺には夢がないんだ。
明後日で20になるのに、何がやりたいのかも分からないんだ」

返事が返ってくる事がないのは当たり前で、祖父ちゃんにも祖母ちゃんにも言えないから墓に向けて言うだけ。

普通に大学に行って、卒業したら普通にサラリーマンになる。

それは、俺の夢ではなく、祖父ちゃんの思い。

〈健太、夢を持ち、夢を叶える様に生きてね〉

母さんからの手紙に良く書かれていた文章。

俺は、何がやりたくて、今を生きているんだ？

それさえも分からなくなった。

この先も、夢のないまま退屈なだけの人生は歩きたくないな。