第1章 一年目

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***  ディヴィアンは淡い金色の髪に、蜂蜜色の瞳を持つ年若い男だった。髪は肩の下まであり、それをいつも紐でひとつにくくっている。身長はそれなりに高く、細身で顔立ちは中性的だ。一応、見目は悪くないらしい。と、行きつけの酒場で女主人に言われたことがある。  そんな自分を、幼い少年はじいっと見つめてきた。もう指はしゃぶっていない。  居間の奥にある狭い寝室には、ベッドがひとつしかなかった。そしてこの家には客間などない。シーツを整えて、ディヴィアンはラケオをその上に乗せた。 「お前は小さいから、まあ、一緒に寝てもさほど窮屈じゃないだろう」  数か月の辛抱だ。誰かとひとつのベッドで寝るなんて、子供のころ以来だと思いながら、蝋燭の火を消して、自分も横になった。  すると暗闇の中で、ラケオがディヴィアンに身をよせてきた。まるでそうするのが当たり前というように、ぴったりとくっついてくる。 「……」  多分、孤児院ではこうやって子供同士身をよせあって眠っていたのだろう。季節は春先で、まだ夜は冷える。そうやって暖を取っていたのかもしれない。  やれやれと思いつつ、ディヴィアンは好きにさせておいた。振り払うほど冷淡な性格でもない。幼い子供がひとりで放り出されれば不安なのは自分も経験があるから理解できる。  ディヴィアンはじっと動かずに、ラケオが眠りに入るのを待った。  翌日には、幼子の手を引いて町の市場まで出かけた。そこで子供用の古着一式を買いこんでその場で着せる。下着にシャツ、ズボンに靴と帽子も。ちゃんとした服装をさせれば、ラケオはとても見目のよい容姿をしていることがわかった。黒い目はまつげが長く、鼻筋も子供ながらしゅっと通っている。 「あらまあかわいい」  古着屋の女主人はそう言ってラケオをほめた。ラケオはディヴィアンを見あげて、恥ずかしそうにまた「おめぐみをありがとうございます」とつたない舌で礼を言ったので、ディヴィアンは居心地の悪い思いをした。
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