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会いたかった。ただそれだけで、生きてきた。
ラケオの手が、ふたたびディヴィアンの身体を撫でてくる。優しい感触に、幸せの涙がにじんだ。そっと身をよせてきた相手が、ディヴィアンの唇に触れる。ディヴィアンは自分から手を伸ばして、ラケオを抱きしめた。
大きくて逞しい身体。かつて何度も触れた相手に、また触ることができて、幸福感に息もできなくなる。
「……しても大丈夫?」
うかがうようにたずねてくる。
「うん」
して欲しかった。昔と同じように。愛する人をふたたび手に入れることができたという実感が欲しい。
ラケオは微笑みながらキスをしてきた。以前と変わらない力強い動きで。全身が歓喜に震える。下肢が千年ぶりに疼き、腹の奥が刺激を求めて蠕動した。
「――ああ」
お互い服を脱ぎ捨て、裸で相手をまさぐりあう。興奮で皮膚があっという間に粟立った。気持ちがよくて、よくて、よすぎて、それだけで心臓が痛いほど軋んだ。
ラケオはゆっくり、気遣うように中に挿入ってきた。ほとんど初めてのように行為を忘れ去っていた秘所を、やわらかくゆるめ、固く反り立った自身を咥えさせた。
「……ふ……ぁ……」
忘れていた強い快感がよみがえる。とじていた粘膜がひらかれ、ゾロリとこすられて脳天まで電撃が突き抜けた。
「ああ……いぃ……」
「僕もだ」
身体がラケオのやり方を思い出す。彼は最初は眠りに落ちていく子猫のようにゆっくり自身を前後させ、それからだんだんリズムを早め、最後は獲物をむさぼる猛獣のごとくディヴィアンの中を蹂躙するのだ。射精するときは抑え気味な呻きをあげて、達したあとは大きく脱力し、こちらと目をあわせて、少しだけ恥ずかしがるように笑う。ディヴィアンはその笑顔が好きだった。
全てが終われば、ディヴィアンを腕の中にすっぽりと抱きしめて、何度も触れるだけのキスをした。それも手順通りだった。
「愛してる、ラケオ」
満たされた想いで、黒い瞳に告白する。
「僕もだよ。アン」
いつまでも。この命が尽きるときまで。いや、その先も永遠に。
ラケオの指先がディヴィアンのまなじりに触れた。いつの間にか泣いていたようだった。優しい指に目をとじて身を任せる。
外では記憶そのままに、草花が夜風にさわさわと揺れている。
その響きは昔懐かしい子守歌のようだった。
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