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そこまで言って、ただ自分が騙されやすいだけなのではと不安になってくる。
それでもヴィルジールを頭ごなしに疑うことが、どうしてもアメリにはできなかった。
「やっぱりアメリは本質を見る目に長けてるね」
「だけどヴィルジールさんの言ってること、難しくてわたしには良く分からないです」
「頭では理解できなくても、心ではちゃんと分かってるはずだよ?」
「でも……」
「とにかくアメリはすごいってことさ。アメリはさ、もっともっと! 自分の力に自信を持つといいよ!」
声高に叫ぶと、ヴィルジールは黒マントごと両腕を大袈裟に広げてみせた。
そして鏡のある壁を振り返る。
「そろそろ近づいてきたみたい。ちょっと様子を見てみようか」
「様子?」
つられてアメリもそちらを見上げると、部屋を映していた鏡に鬱蒼と生い茂る木々が浮かび上がってきた。
「ロラン……!」
ハッとして、ドレスを引きずり駆け寄った。
そこに映し出されていたのは、夜明けの森で、魔物の群れと死闘を繰り広げているロランたちの姿だった。
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