第6話 勇者の部屋

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 呆然と残された部屋の中、ロランのうめき声が小さく漏れた。 「勇者……?」  恐る恐る覗き込むと、ロランは苦しげに目を閉じていた。  額に浮かぶ玉のような汗にその辛さが伺える。  ヴィルジールの言うことなど、まるで意味が分からなかった。  何しろアメリに男性経験はない。恋人すらできたことはなくて、何をどうしたらいいのかさっぱりだ。  とりあえず看病といえばと思い、枕元にあった布で汗を拭ってみた。 「熱い……」  その熱さに驚いて、自分の冷えた手をおでこに添える。  アメリの(てのひら)が気持ちよかったのか、ロランの表情がいく分か和らいだ。  端正な顔を覗きこむ。そんな場合ではないというのに、アメリは思わずロランに見惚れてしまった。 「ほりが深くて鼻筋も通ってて……まつ毛もすごい長い……」  勇者でなくとも女たちが群がるのがよく分かる。  恋をしたことがないアメリでも、見ているだけでドキドキしてきてしまった。
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