第41話 対決

4/6
前へ
/267ページ
次へ
「父さんになんでも我が儘を聞いてもらってたベリンダに、わたしの気持ちなんて分からないわ!」 「そんなもの分かりたくもない! 初めから何でも持ってるくせに、自分には何もありませんって顔して被害者ぶって。アメリのそういうところ、わたし昔から大っ嫌いなのよ!」  いきなりの取っ組み合いの喧嘩に、周囲の人間が呆気にとられている。  中には囃し立てる者もいて、ふたりはますますエキサイトしていった。 「恵まれて育ったあんたと違って、わたしたちには何にもなかった! だからわたしもデボラ母さんも、欲しいものは自分の力で手に入れてきたわ!」 「だからってロランのことはひどすぎるでしょう!」 「欲しいモノは欲しいって言って何がいけないって言うの!」 「ロランはモノなんかじゃないっ! わたしの、誰よりも大切な(ひと)よ……!」  アメリは腹の底から声を張り上げた。  それこそ人生でいちばんの大声だ。 「なによ。少しはましな顔ができるようになったじゃない」  ベリンダがふいにアメリに笑顔を向けた。  その嘘偽りのない表情は、やはり自信に満ちていてアメリでさえも魅了する。 「ハニー、今日も元気でキュートだね。でももう出発の時間だよ?」 「今行くわ、ダーリン」  身なりの良さそうな男がベリンダに声をかけてきた。
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

139人が本棚に入れています
本棚に追加