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まずはドナの店で聞いた勇者一行が立ち寄ったという隣町へ向かうことにした。そこからロランたちが辿った道を追いかけて行けばいい。
途中立ち寄った街で、アメリは安宿を探していた。
あまり治安が悪いところには泊まりたくないが、財布事情を考えるとそう贅沢も言っていられない。
「アーメーリぃー!」
「え?」
遠くからロランに呼ばれた気がして、アメリは人気のない路地で振り返った。
しかしそれらしい人物はいない。視線の先に髭ぼうぼうの小汚い浮浪者が見えるだけだ。
「うおおぉおおおぉっ!」
その浮浪者がいきなり大声を上げた。
ぼさぼさの髪を振り乱し、男はものすごい勢いでアメリに向かってくる。
「えっ、えっ、なにっ」
あまりの恐怖にアメリは悲鳴を上げて逃げ出した。
とにかく怖くて、闇雲に走り回る。
こんなことならもっとちゃんとした宿を探すべきだったと、半泣きになったところでアメリは男に掴まってしまった。
人通りもない裏路地だ。
二の腕を掴まれ、乱暴に塀に押しつけられる。青ざめてアメリは死をも覚悟した。
「やっと見つけたぞ、アメリ」
「ロラン……?」
伸びきった前髪の隙間からロランの瞳が、アメリのことを眼光鋭く捉えていた。
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