第42話 もう逃がさない

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「だって! こんなことしてもロランの怪我、ちっとも治ってないじゃないっ」  揺さぶられながら、アメリの心は張り裂けそうになった。  これほどアメリが喘いでいるのに、全くと言っていいほどロランの傷を癒せていなかった。 「わたし、も、ロランの乙女じゃ、なくなっちゃった。だからこんなことしても意味な」 「そんなことはどうでいいと言っている!」 「ああっ」  言葉も発せられないほどに激しく(ナカ)をかき回される。  こんなにも平静を欠いたロランを見るのは初めてだ。 「んっ、あっ、ふっ……ロラン、は……おこ、怒ってるの……?」 「何がだ」 「わたしの聖剣が、折れちゃ……ったから」  息も絶え絶えに訴えると、ようやくロランの動きが穏やかになった。  ゆるゆると抜き差しを続けながら、ロランの瞳がアメリを映す。 「俺の何がいけなかったんだ?」 「え……?」  逆に聞き返されて、アメリは不思議そうにロランを見た。  そのロランの顔は、どこか後悔をにじませている。 「聖剣が折れたということは、アメリが俺に不信感を抱いたということだ。何か原因があったはずだ。違うか?」 「あ……」  勇者(ロラン)の聖剣の威力は乙女(アメリ)の好感度で決まってくる。  いつかヴィルジールに言われたことを思い出すのと同時に、ベリンダとロランの一夜が頭をよぎった。 「隠さず正直に言ってくれ」 「それはロランがベリンダと……」
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