第42話 もう逃がさない

5/6
前へ
/267ページ
次へ
 アメリの家に泊った翌日、ベリンダは勝ち誇ったようにロランのシャツを手にしていた。  聖剣が折れロランが怪我を負ってしまったショックで、ずっぽりと記憶から抜け落ちてしまっていたが、思えばすべての発端はソレだった。  あの一夜はロランが怪我をする以前の出来事だ。乙女の癒しうんぬんの話は全く関係ない。 「ベリンダ……?」  それなのにロランの眉間にしわが寄った。誰の名だ、と言ったふうに首をひねっている。  一度寝た女などすぐに忘れてしまうのだろうか。そう言えばマーサが言っていた。昔ロランは相当遊んでいたと。 「あ、ああ、ベリンダだな。その彼女がどうしたと言うんだ?」  ようやく思い出したのか、ロランが白々しく聞き返してきた。  さすがのアメリもふつふつと怒りが沸いて来る。 「とぼけてもわたし知ってるんです。わたしの家に泊った日、ロランはベリンダの部屋に行きましたよね?」 「部屋に……? ああ、確かに酔った彼女を部屋まで連れていったな」 「そのままふたりで一晩過ごしたんでしょう?」 「そんな覚えはないが……」 「嘘言わないでください! ベリンダ言ってました。ロランの持久力がすごかったとか、ほかの男の人と全然レベルが違ってたって!」  涙目で睨み上げると、ロランはぽかんという顔をした。 「いや、それは……もしかしたら居間で君を待っている間、俺がずっと腹筋や腕立て伏せをしてたからじゃないのか……?」
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

140人が本棚に入れています
本棚に追加