第1話 聖剣の乙女

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「駄目だよ。どうやって聖剣が現れるか、ちゃんと確認しとかないと」  戦闘中にあたふたはしたくない。  ヴィルジールにそう言われ、ロランは渋々といった感じでアメリに向き直った。 「本当にいいんだな?」  大きな手を肩に乗せられて顔を覗き込まれる。  その近さに驚きつつも、アメリは素直に頷いた。 「自分が本当に聖剣の乙女なのか、わたしもちゃんと確かめたいです」 「分かった」  難しい表情のまま、ロランはぐっと顔を近づけてくる。 「目をつぶってくれないか?」 「目を? どうして?」 「どうしてって……やりづらいだろう」  ロランは怖いくらい真剣な顔をしている。何をするつもりか知らないが、言われた通りにまぶたを閉じた。  聖剣を取り出すには、何か儀式が必要らしい。  薄目を開けるとロランの顔がすぐそこにまで迫っていた。今にも触れそうな唇に、アメリはとっさに頭を大きくのけぞらせた。 「なぜ逃げるんだ?」 「なぜって近すぎます」 「近づかないとできないだろう」 「できないって、何を?」 「聖剣を呼び出す儀式に決まっているじゃないか」  にらみ合ったまま沈黙が訪れる。  根負けしたのはロランの方だった。 「もしかしてやり方を聞いていないのか?」 「何も」  その途端、ロランはヴィルジールに怒りの顔を向けた。 「話が違うぞ」 「だって怖気(おじけ)づかれても困るじゃない」  不穏なやり取りを前にして、アメリの胸に不信感が湧き上がる。
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