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それでこんな格好なのか。
ドレスに視線を落としていると、ヴィルジールがくすりと小さく笑いを漏らした。
「ソレね、ロランが好きそうなヤツ選んどいたから」
「え?」
「ほら、ロランってば王城で聖剣の乙女の衣装、めちゃくちゃ嫌がってたじゃない?」
「はぁ」
「ロランはね、ホントはそういう清楚系が好きなんだ。大丈夫、間違いないよ。旅も長かったし、ロランの嗜好は把握済みさ」
自信ありげに言われるも、力説ポイントがずれている気がする。
未だに信じたくない気持ちを抱え、アメリはおずおずと問いかけた。
「本当にヴィルジールさんが魔王なんですね?」
「そうだよ。これ見ても信じられない?」
ヴィルジールの爪がみょーんと伸びる。
尖った爪をカチカチ鳴らされて、青ざめたアメリは益々カーテンにしがみついた。
「信じます、信じます! だから今すぐソレしまってくださいっ」
「そう言ってもらえると助かるよ〜。爪が長いとあちこち引っかかっちゃって面倒なんだ」
シュンと爪をしまうと、ヴィルジールがニッコリと手招きをしてくる。
「そんな端っこにいないで、もうちょっとこっち来なよ。聞きたいこといっぱいあるでしょ?」
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