第50話 魔王城

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 見た目は近寄りがたい魔王様だが、中身はまんまヴィルジールだ。  少しだけ警戒を解いて、アメリはベッドの上を慎重に這って移動した。かさばるドレスがなんとも動きにくくてしょうがない。 「あ、その服、重い? だったらこっちにしようか」 「ひえっ」  ヴィルジールのひと声で、アメリのドレスがひゅっと一瞬で様変わりした。  今度はスリット深めの真っ黒いイブニングドレスだ。 「ななな何を……」 「あれ? 不満? もしかして裸にして着替えさせたと思ってた?」 「そ、そうじゃなくて、さっきの方がよかったカナ? とか思って……」  部屋の中はどこもかしこも真っ黒だ。  そんな環境で服まで黒いとなると、どうにも気分が滅入ってきてしまう。 「そう? こっちの方が僕の好みなんだけど。ま、アメリはロランの乙女だからね」  気づくと服が純白のドレスに戻っていた。ほっとしてひだの多いスカートを整え、アメリはなんとか座りよく落ち着いた。  それにしても近くで見るヴィルジールは美形すぎて迫力満点だ。  無意識にアメリは近くにあったクッションを胸に強く抱きしめた。
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