第51話 魔王と魔物と人間と

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 ヴィルジールが再びクッキーを宙に浮かした。それを口に放り込まれまいと、アメリは慌てて自らクッキーに手を伸ばす。  そのあとはアメリも吹っ切れてしまって、会話しながらのコーヒータイムになった。たくさんあったクッキーも自然と数が減っていく。 「ほら、勇者が魔王を倒せば、平和が来たって人々は安心感で満たされるでしょ? その喜びが広がると、しばらくは魔物たちも大人しくなるんだ。その状態が永遠に続かないのは、人間の業の深さだよね」 「だから定期的に魔王は復活するんですか?」 「そう、同時に新たな勇者も目覚めるってそんな仕掛けになってるのさ」  なんてことはないように、ヴィルジールは笑顔で説明を続けていく。 「でも回を重ねるごとに魔物の力がマシマシになってきててさ。ここんとこ、勇者の寿命が先に来ちゃって全然魔王討伐が捗らなくって」 「そう言えば……ヴィルジールさんは魔王なのに、仲間の魔物を攻撃して大丈夫だったんですか?」  討伐の旅で、ヴィルジールは普通に魔物を退治していた。  魔物にしてみれば裏切り行為以外の何物でもないだろう。 「魔物って言ってもさ、別に僕の眷属ってわけじゃないし。闇の属性を持つ似たもの同志とは言えるけど」 「そうなんですか?」
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