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「獣型や植物型の魔物は、魔力を持った野生の生き物ってだけなんだよ? 人間にも魔力持ちとそうでない者がいるじゃない。タマゴウサギなんかがいい例だけど、害を成すからって人間都合で勝手に魔物扱いしてるだけさ」
「で、でも死霊とか邪竜とか、そういうのもいるじゃないですか」
先ほどから何やら人間が責められているように感じて、アメリは思わず反論に出た。
しかし動じた様子もなく、ヴィルジールは軽く肩をすくめてくる。
「肉体を持たない魔物たちって、そもそも人間の想念から生まれたって知ってる?」
「え?」
「怒り、悲しみ、不安、憎しみ、後悔、妬み、恐れ……あの手の魔物はどれもみんな、そんな重い感情が寄り集まって作り出された存在なのさ」
信じ難い話にアメリは言葉を失った。
そんな様子をヴィルジールは楽しそうに眺めている。
「人間ってさ、面白いよね。自分たちで生み出したモノに恐怖して、ソレに更なる力を与えてるんだから」
「だったらヴィルジールさんが討伐される意味なんてどこにもないんじゃ……? 魔物だって、むやみやたらに倒す必要もないはずだし」
闇の存在を減らすには、人がただ愛の心を育めばいい。自分たち人間は、たったそれだけのこともできないでいるのか。
そう思うとなんだか悲しくなってきて、アメリは顔を曇らせた。
対照的にヴィルジールは驚きで目を丸くしている。
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