138人が本棚に入れています
本棚に追加
「わ、そんなこと言った人間はアメリが初めてだ! こんな話しても誰も信じなかったし、それこそ魔物も魔王も、駆逐して当然ってヤツらばっかだったんだよ?」
ヴィルジールはやたらとうれしそうだ。
うんうんと頷き、なにやらぶつぶつ独り言を呟いている。
「そっかそっか、アメリがそんなだからロランの覚醒が早まったのか」
「え? わたし?」
「言ったろう? この世は陰と陽のバランスなんだよ。女性は想像し生み育て、すべてを包み込んで慈しむ存在さ。対して女性を守るために行動を起こし、その願いを叶えることに悦びを覚えるのが本来の男の在り方なのさ」
「インと、ヨウ……?」
「今の人間たちを見てると、あまりにも女性が抑圧され過ぎてるよね。自己犠牲が当たり前になっていて、魔物がはびこるのもそういった理由からさ」
急に難しい話をされてアメリは戸惑ってしまった。言われたことの意味が欠片も分からない。
それでもヴィルジールがこの世の真理の話をしているだろうことは、なんとなくでも理解はできた。
「そんな話、わたしにしてもいいんですか……?」
アメリだって人間のひとりだ。
それもヴィルジールを討伐する側の最前線に立っている。
「これまではどれだけ僕が真実を語ろうとも、誰も聞く耳持たないって感じだったから。だけどアメリは違うでしょ?」
「だって、ヴィルジールさんが嘘言ってるようには思えないし……」
最初のコメントを投稿しよう!