97人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕なりの親切心だったんだけどな~。アメリがそこまで言うなら、あの魔物まるっと全部引き上げよっか?」
「あっ、ダメ! い、いなくならない程度にもっと数を減らしてくださいっ」
「え~、注文が多いなぁ」
ぶつぶつ言いながら、ヴィルジールはもう一度腕を高く掲げた。
かと思うと、ばさりと黒のマントを翻す。
「なんかもうめんどいや。アメリ、ちょっと行ってロランを焚きつけて来よう!」
「ふぇっ!?」
ヴィルジールの小脇に抱えられ、気づけばアメリは遥か上空から鬱蒼と広がる森を見下ろしていた。
下から強く吹き上げる風に、髪とスカートが激しく靡く。あまりの恐怖にアメリはヴィルジールのわき腹にしがみついた。
「はっはっは、よくぞここまで来たな、勇者ロランよ!」
地上に向かってわざとらしく声を張り上げたヴィルジールにハッとなる。
「アメリ……!」
「ロランっ!」
木々が開けた少しの空間から、ロランたちの姿が垣間見えた。先ほどまで鏡越しに見ていた情景だ。
届くことはない距離と分かっていても、懸命にロランに向けて手を伸ばした。ヴィルジールの腕から逃れようと、必死に身をよじる。
「ロラぁン!」
「アメリっ、今助ける……!」
雄叫びを上げ、ロランは魔物ごと周囲の木々を薙ぎ払った。
一気に開けた視界に、アメリとロランは熱く視線を絡め合う。
最初のコメントを投稿しよう!