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サラが使ったのは、唱える者によっては死者をも蘇生すると言われる伝説級の白魔法だ。裏を返せば闇属性の魔物には致死レベルの呪詛となる。
「はははっ、魔王に向かって人類最高峰の癒し魔法を放つなんて! さすがは僕のサラ!」
しかし傷ひとつ負うことなく、ヴィルジールは相変わらずピンピンしている。
上機嫌に笑い声をあげるヴィルジールを見上げるサラは、呆然とした様子で立ち尽くしていた。
「いくら最上級の癒し魔法を唱えても、そんな憎しみに満ちてちゃ意味ないってば。僕にとってはご褒美にしかならないよ?」
「そんな……」
「ヴィルジールってば性格どころか存在までねじくれてんじゃない? サラの回復魔法でもダメージを与えられないなんて」
「ああ、これまで順調にサラに嫌われてきたのも、初めからヴィルジールの策略だったのかもな」
身も蓋もないマーサとフランツの突っ込みに、心外とばかりにヴィルジールは肩をすくめた。
「やだなぁ、ふたりとも。僕の純真なサラへの思いをそんなふうに言わないでよ」
へらりと笑い、黒マントごと片手を開く。
そのままヴィルジールは、背後を大袈裟な動作で指し示した。
「さぁ、魔王城はこの崖の上にあるよ! ロラン、あともうひと息だから頑張って!」
つられたアメリがヴィルジールの腕の中から見上げると、切り立った崖のすれすれに物々しい魔王城がそびえ建っていた。
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