第53話 崖下の攻防

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第53話 崖下の攻防

 アメリの消えた上空を見上げる。  その先にある魔王城を睨み、ロランは迷いなく崖下へと向かった。  近づく魔物たちは無言の一振りで消し飛んでいく。その気迫に、怯んだ魔物がロランの頭上をいたずらに旋回しはじめた。 「ロラン、本当にここを登るのか?」 「ああ、魔王城に向かうのは俺だけでいい。皆は地上から援護を頼む」  目の前にそびえ立つはまさに断崖絶壁だ。登っている最中に、聖剣を振るうなど難易度が高すぎる。  魔法を用い、むき身のままの聖剣を袈裟懸けに背中に固定した。  岩肌を掴み、ロランは腕の力だけで崖を登っていく。すかさず襲い来る死霊の群れに向けて、サラが援護の白魔法を放った。  広範囲に効く魔法はその分威力に劣る。すり抜けた魔物がロランに牙を剥こうとした。 「大物は俺に任せろ!」  フランツの投げた槍が、鳥とも獣ともつかない有翼の魔物(ガーゴイル)を貫いた。鎖を引くと、槍はフランツの手元に再び戻ってくる。 「まずいわ、邪竜まで集まってきてる!」  マーサの視線の先には、何匹もの闇色の竜が飛んでいた。  あれも実体のない魔物で、負のエネルギー体のような存在だ。明らかにロランを獲物と見定めている様子に見えた。 「邪竜か……ふっ、かえって都合がいい」
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