141人が本棚に入れています
本棚に追加
第53話 崖下の攻防
アメリの消えた上空を見上げる。
その先にある魔王城を睨み、ロランは迷いなく崖下へと向かった。
近づく魔物たちは無言の一振りで消し飛んでいく。その気迫に、怯んだ魔物がロランの頭上をいたずらに旋回しはじめた。
「ロラン、本当にここを登るのか?」
「ああ、魔王城に向かうのは俺だけでいい。皆は地上から援護を頼む」
目の前にそびえ立つはまさに断崖絶壁だ。登っている最中に、聖剣を振るうなど難易度が高すぎる。
魔法を用い、むき身のままの聖剣を袈裟懸けに背中に固定した。
岩肌を掴み、ロランは腕の力だけで崖を登っていく。すかさず襲い来る死霊の群れに向けて、サラが援護の白魔法を放った。
広範囲に効く魔法はその分威力に劣る。すり抜けた魔物がロランに牙を剥こうとした。
「大物は俺に任せろ!」
フランツの投げた槍が、鳥とも獣ともつかない有翼の魔物を貫いた。鎖を引くと、槍はフランツの手元に再び戻ってくる。
「まずいわ、邪竜まで集まってきてる!」
マーサの視線の先には、何匹もの闇色の竜が飛んでいた。
あれも実体のない魔物で、負のエネルギー体のような存在だ。明らかにロランを獲物と見定めている様子に見えた。
「邪竜か……ふっ、かえって都合がいい」
最初のコメントを投稿しよう!