第53話 崖下の攻防

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 援護射撃をすり抜けた魔物が、入れ替わりで岩を掴むロランの手元を狙ってくる。  ここで落ちたら一巻の終わりだ。今のところ下方からの援護でぎりぎり持ちこたえているが、一瞬も気を緩めることなどできない状況だった。  そうこうしているうちに、ガーゴイルの鋭い爪がロランの背を捉えた。  勇者のマントを切り裂いて、その背も大きく抉られる。 「くぅっ!」 「ロラン……!」  サラの白魔法に続いて、フランツの槍がなんとか魔物を退けた。それでも隙を狙ってくる魔物は後を絶つことはない。  痛みを無視し、ロランは次の岩を掴むべく腕を伸ばし続けた。どうしても援護が間に合わない攻撃は、片腕のみでとっさに聖剣を振るった。  反動で指が滑りそうになる。させてなるものかと、ロランは必死に岩にしがみついた。 「何が何でも登り切ってやる」  絶対にここで諦めるわけにはいかなかった。  今ロランを支えているのはアメリの存在だけだ。ヴィルジールの腕に抱かれ、恐怖におびえるアメリの泣き顔がこの瞬間も頭を離れない。 「待っていてくれ、アメリ……」  登るほどに、傷を負うことが避けられなくなっていく。命綱のないロッククライミングを、それでもロランは地道に続けていった。
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