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援護射撃をすり抜けた魔物が、入れ替わりで岩を掴むロランの手元を狙ってくる。
ここで落ちたら一巻の終わりだ。今のところ下方からの援護でぎりぎり持ちこたえているが、一瞬も気を緩めることなどできない状況だった。
そうこうしているうちに、ガーゴイルの鋭い爪がロランの背を捉えた。
勇者のマントを切り裂いて、その背も大きく抉られる。
「くぅっ!」
「ロラン……!」
サラの白魔法に続いて、フランツの槍がなんとか魔物を退けた。それでも隙を狙ってくる魔物は後を絶つことはない。
痛みを無視し、ロランは次の岩を掴むべく腕を伸ばし続けた。どうしても援護が間に合わない攻撃は、片腕のみでとっさに聖剣を振るった。
反動で指が滑りそうになる。させてなるものかと、ロランは必死に岩にしがみついた。
「何が何でも登り切ってやる」
絶対にここで諦めるわけにはいかなかった。
今ロランを支えているのはアメリの存在だけだ。ヴィルジールの腕に抱かれ、恐怖におびえるアメリの泣き顔がこの瞬間も頭を離れない。
「待っていてくれ、アメリ……」
登るほどに、傷を負うことが避けられなくなっていく。命綱のないロッククライミングを、それでもロランは地道に続けていった。
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