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一方地上では、肩で息をするサラが白魔法を上空に放つ。遠のいた分だけ命中率も落ちていく。
しかし飛距離を補おうとすると、魔法の威力が半減してしまう。
「この距離では援護に限界が……」
「よし、そろそろ頃合いだな。サラ、俺に考えがある。一匹でいい、邪竜の注意をこっちに向けてくれ」
「分かりました。火の精霊よ、その愛の灯をここに宿せ……!」
出現した光の弓を引き、サラは白く輝く矢を放った。綺麗な放物線を描き飛んだ矢は、見事邪竜の尾に突き刺さる。
耳障りな咆哮を上げ、身を翻した邪竜がサラに狙いを定めてきた。大きな口が最大限開かれて、報復のための闇の炎が吐き出されようとする。
「させねぇよ!」
すかさずフランツが邪竜に槍を投げつけた。
「おら! 貴様の相手はこの俺だ!」
喉元に食い込んだ槍を、邪竜ごとこちらに引き寄せる。釣り針にかかった魚のように邪竜は宙を暴れ狂い始めた。
手繰り寄せた鎖を足掛かりにし、フランツは邪竜に向けて大きく跳躍した。そのまま背に乗り上げる。
直接闇のエネルギー体に触れ、激痛がフランツを駆け抜けた。しかし怯むことなく、フランツは暴れ馬よろしく鎖の手綱を握り締めた。
「このまま一気に行くぞ……!」
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