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鎖で操られた邪竜が、フランツを背に乗せ崖すれすれを垂直に飛翔する。
その上空では突き出た岩に掴まったロランが、旋回する魔物たちを聖剣で薙ぎ払っていた。足場が崩れてしまったようで、宙ぶらりんのまま苦戦を強いられている。
「ロラァアン、俺に掴まれぇえ!」
風を切った邪竜が、高速でロランのすぐ脇を通り過ぎようとする。
チャンスは一度きりだ。迷いなく、ロランは掴まる岩から手を離した。
一瞬宙に浮いたロランの腕を、フランツはがっちりと掴み取った。その重みに負けることなく、渾身の力でロランの体を引き上げる。
「いけぇ、ロランっ!」
「うぉおおぉおおおぉお……!」
上昇する邪竜の勢いに乗せられて、ロランは崖を駆け上がった。
そして無事に城壁へとへばりつく。
「よっしゃあ!」
それを見届けたフランツが、バランスを崩して邪竜から振り落とされた。とっさのサラの魔法で、木々のクッションへと落下する。
「あとは任せたぞ、ロラン」
そこから魔王城を見上げるも、もはやロランの姿は目視できなくなっていた。
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