秘めてる想い

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秘めてる想い

私には、高校までずっと一緒にいる幼馴染がいる。 その幼馴染が最近、歌にハマっているらしい。 授業の休み時間もご飯の時間もずっとイヤホンをして、音楽に夢中になっている。 幼馴染の私からしたら、それは気に入らなかった。 いつもだったら、彼は授業が終わるとすぐに私の席に来て、見ているアニメの話や、昨日あったことを楽しそうに長々と話してくるのに、最近は私を疎かにして、ずっと音楽を聞いている。 彼が私を疎かにしていることに、私はイラついていた。 イラついた私は今日、彼の耳からイヤホンを取り上げ、強引に話しかけた。 「最近ずっと音楽聞いているけど、何聞いてんの?」 「……お前には関係ない。早くイヤホン返せよ」 いくら幼馴染といえど、さすがの私もその態度には耐えられなくなった。 「そんな言い方ないじゃん!もういい!これから君とは関わらないから。お元気で!」 捨て台詞を吐き、周りにある物を蹴りながら、私は自分の席に戻った。 その日は結局、彼とは一目も合わせずに帰った。 家に着き、自分の部屋に入る。すぐにベッドに横になり、冷静になった私は 「あ〜!言い過ぎちゃった〜!本当は思ってないのに〜!」 とても反省していた。 10年以上一緒にいた友達と初のケンカ。彼女の内心は不安でいっぱいだった。 「どうしよ〜このまま仲が悪いままなのかな〜!?そんなのやだよ〜!」 彼女は顔を枕に沈め、半泣きになっていた。 ベッドの上でドタバタと音を立てていると、お母さんがドアを開け、心配そうにこちらを見てきた。 「なにかあったの?もしかしてあの子と喧嘩でもした?」 私のお母さんは妙に勘が良い。人の話を聞くのも上手で、昔からよく話し相手になってくれていた。 自分ではどうすればいいか分からなかったから、私はお母さんに相談することにした。 「……ちょっとこっちに座って」 お母さんを椅子に座らせて、私はその対面に座った。そして、今日あった事をお母さんに話した。 するとお母さんは、妙に納得したように首を縦に振った。 「……そんなことがあったのね。分かるわ。私も言いすぎちゃうことはよくある」 「じゃあ、どうすればいいかな?お母さんならこんなときどうする?」 私は今までこんな経験をしてきたことが無かったから、どうしていいか考えられなかった。 「お母さんはね、どうすればいいか分からなくなった時は、必ず音楽を聞いていたわ」 「音楽?」 「そう。音楽というのはね、歌詞に "人の思い" が宿っているの。音楽を聞いていると時々、歌詞が心とリンクする時があるの。歌詞に共感したり、場合によっては感動で涙を流したりもしたわ。そしてその歌詞は、私が困っていると必ず、答えと勇気をくれるの」 「答えと勇気を…」 「あなたも一度音楽を聞いてみなさい。そうすればきっと、あなたにも答えが出せるはずよ」 そう言うと、お母さんは部屋から出ていった。 お母さんが出ていくのを見送った私は、早速音楽を聞くことにした。
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