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付き合ってから初めての大きなケンカ。いや、そもそも本気で付き合ってると思ってたのは僕だけだったのかもしれません。
《帰ってきてしまいました…。でも、これ以上あの場にいられなかったです》
家に帰ってきた僕は、力が抜けたようにベッドに倒れ込みました。ぐずぐずと鼻と目を濡らしているのでティッシュで拭い、携帯を見てみます。でも、花野くんからの連絡はありません。
《このまま…関係は終わるのでしょうか。ケンカ別れというやつですか…》
このままではダメだと分かっているけど、あの事実がショックで仕方ありません。ひとまず落ち着こうと体を起こすと、携帯ゲームの通知音が聞こえました。
《あ、今日ログインしてないから…BB男爵さんからもアイテム送られてきてますね…》
気持ちを落ち着かせるために、とりあえずゲームにログインしました。やる気は起きないので、アイテムを受け取って終わろうとした時、チャットが送られてきました。
【ふぉーえばーぽえむ殿、元気でござるか!?今日1度もログインがなかったので心配してたぞよ】
【BB男爵さん、ありがとうございます。今日ちょっとバタバタしてまして…】
【なんだ、そうでござるか!よかったでござる!】
【でも今日はちょっとプレイする気になれなくて…すみません】
【いいでござるよ!そういう日もありますから!しかしながら、なんだか元気がないご様子!もしかして何かあったでござるか?】
BB男爵さんが心配してくれてるのが嬉しくて、少し吐き出したくなりました。こんなこと他の人には話せないし…。
【ちょっとショックなことがありまして…でも立ち直ろうと気持ちを落ち着かせているところです】
【なにぃ!そうでござったか…。もしや前話していた男性疑惑のあった彼女さんのことでござるか?】
【あ、えっとはい…】
この時僕は、友人の話の体にしてたことをすっかり忘れていました。それどころではなかったです。でも、自分の話だということは早々にバレていたとは思いますが。
詳しい内容は書かずに、彼女が男子であったのは本当で、それよりも僕を好きではなかったようですと書きました。すると、少し時間が空いてから返信がきました。
【そうでござるか…。それは本人に聞いてみたでござるか?】
【え…】
【自分のことを本当に好きではないのか、彼女…いや、彼に直接聞いたでござるか?】
【あ…】
《そういえば…直接聞いたわけじゃありません。付き合ったことを賭けのためだと知ってショックで、最初から僕のことなんて好きじゃなかったんだと自分で決めつけただけです…》
【聞いてない…です】
【ならばまだ諦めてはならぬ!本人に気持ちを聞いてからでも遅くは無いぞよ!何かショックなことがあったようでござるが、1度落ち着いて話してみるとよいぞよ。まだふぉーえばーぽえむ殿が彼のことを好きでいるならばの話ではあるが】
僕はびーちゃんが男子であることよりも、僕のことずっと好きじゃなかったんだ…遊びのためだったんだ、という方がショックでした。
でも冷静に考えたら…なんであの時、彼は僕と同じで苦しそうな、泣き出しそうな顔をしていたのでしょう。ただ遊びだったら、ああいう時「バレたしもういいや〜」と言った風に開き直るのが鉄板です。
《恋愛初心者なせいで…感情に任せて考えてしまってたのかもしれません…!》
【BB男爵さん!ありがとうございます…。僕…行かなきゃいけないです!ちょっとログアウトします!】
【おお!構わんぞよ!頑張るでござる!】
僕は慌てて部屋を飛び出しました。不思議そうに声をかけてきた母親に、「出かけます!」とだけ言って。
そして制服のまま全力で走りながら、携帯で花野くんに電話をかけました。でも何度呼び出しても電話に出ません。
《とりあえず家に行ってみるしかないです…!》
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