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《いた…!!やっと会えた!》
花野くんも額に汗を浮かべていて、ジロリと茶髪くんを睨みながら手を掴んでいます。「ギブギブ!!いてえよ!」という声にやっと気付いたのか、ハッとした顔をして手を離しました。
「何すんだよ花野!いってーな…てか帰ったんじゃねーのかよ」
「…用事があって戻ってきた」
「はぁ?用事って…」
ドキマギしている僕と花野くんを見比べて、茶髪くんは「あーそういうこと?」と言ってニヤついています。
「じゃーお邪魔みたいだし、俺も帰るわ。またな花野〜。明日詳しく聞かせろよ」
「いやだ」
「は!?人の手捻り上げといて嫌だじゃねーよ!ぜってー話せよ!」
そう言って本当に歩いて行って、僕と花野くん2人だけになりました。目の前で荒く呼吸して顎の汗を拭っているこの人は、僕の彼女…いや、彼氏…になるんですね。
でも、女の子の姿じゃなくても可愛らしいことに変わりはありません。汗をかいているからキラキラして見えます。
「あ…、さっき兄貴に聞いたけど家に来てくれたんだよね?ごめん、携帯電源切れてて…」
「え!!あ、いや!」
「それに…今までほんとにごめん。騙すようなことして…女のフリして嘘ついて…」
花野くんは僕に向かって深く頭を下げました。いつも聞いていた声より、少し低くて重みがあります。僕が「顔上げてください!」と言うと、気まずそうな顔をしてゆっくり頭を起こしました。
「…あの、僕に告白してくれたのは賭けのためだったんですよね?」
「……っそれは」
「僕のこと…今、どう思ってますか?」
「え…?」
「最初からずっと…好きでもなんでもなかったんでしょうか」
何を言っているんだ、とでも言いたげな表情で目を大きくして僕を見る花野くん。両手でぎゅっと制服の裾を掴んで、下を向きました。
「…っなんでそんなこと聞くの?俺は本当は男だったんだし…これ以上男と付き合うなんて無理でしょ?えーくんを傷付けたんだから、殴るなりしてくれていいのに」
「僕は…、そ、そんなことしたいんじゃありません!確かに男の子だって知って驚きましたけど…それよりもびーちゃ…花野くんの気持ちが知りたいんです」
「……っ」
「さっきの彼に、賭けの話は乗り気で受けてたって聞きました…。それなのに期限を過ぎても付き合ってたのは何でですか?さっき…泣きそうな顔をしてたのは何でですか?」
《相手の本心を聞くのは怖いけど…、BB男爵さんの言う通り、決めつけて勝手に諦めてはダメです。怖いけどしっかり聞かなきゃ…!》
ごくりと、2人とも固唾を飲んだ後。花野くんは、僕を見上げながら目を潤ませてやっと口を開きました。
「……っ好き」
「…………え、?」
《げ、げ、幻聴?い、い、いま、好きって聞こえたような…。いや、幻聴なんかじゃないです…よね?》
「た、確かに、賭けの話に乗ったのは本当。そうでもしてキッカケが欲しかったから…。そ、その時は、気になってる程度だったけど…付き合い出したらどんどん…気持ちが…」
「そ、そ、そ、それって…あの…」
「…っ話さなきゃって思ったけど、バレて関係が終わるのが怖かった…。こんなこと言うのわがままだと思うけど、」
「え、あ、あの、本当に…ですか?」
「……えーくんのこと好き。本当は、別れたくない…!」
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