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《可愛い…》
前に抱きしめた時とは違って、身を任せてくれているのが嬉しいです。今思えば、あの時僕が手を繋ごうとするのを避けたり、離れようとしたのは男だとバレるかもしれないと思ったからでしょうか。
恐る恐るそのことを聞いてみると「そうだよ」と枇杷斗くんは俯きながら言いました。
「俺、男にしては背低いし顔も体つきもゴツくなかったから…最初はよかったけど、だんだん体とか手も男らしくなってきちゃって…。触られたらバレると思った」
「…あ、もしかして暑いのにタイツを履いてたりしたのも…?」
「うん。足も筋肉ついてきて…素足だとそろそろやばいと思って履いてた。暑くてしにそうだったけど」
「そうだったんですね…」
そこまでしてたのが、賭けのためではなくてバレて僕と別れたくなかったから…なんですよね。色々な疑惑が全てが繋がった気がします。
「じゃあ、しばらく会うのをやめようって言ったのは…」
「えーくんに抱きついた時とか家に来た時、何か勘づいてそうだなって気付いて…でも話す勇気も出なくて避けてた。多分あの時の熱も知恵熱だと思う。逃げてばっかでごめん」
「い、いえ…!!嫌われた訳じゃなくてよかったです…。それに熱が出ちゃうほど僕のことで悩んでくれてたってことですよね」
「…普通は、こんなことされたらすごく怒ると思うのに。ほんとえーくんは変わってるね」
「えっ…!」
《少し笑った、可愛い…》
しかし落ち着いてきたら、改めて自分と枇杷斗くんの違いをふと感じました。なんで僕をそこまで…。男の姿でも整った中性的な愛らしい顔をしている彼と、究極一重のモブ顔の自分では釣り合っているのか不安に…。
「あ、あの…でも、なんで僕だったんですか?僕は普通すぎる顔だし背も高くないし…枇杷斗くんは、じょ、女子の時も男子の時もその…か、か、可愛らしいというか魅力的なので…そんな人がなんで僕を…」
「別に俺は、女顔ってだけでそんなんじゃないよ。それにえーくんの一重とか、小さな口も首のホクロも好きだよ、俺」
「…っうぇ!!?」
「俺にとっては、えーくんは魅力的だよ。もし釣り合ってないとか考えてたら怒っちゃう」
《バ、バレてる!!》
「そんなの、どうでもいいから。俺はえーくんがいい。そうやって優しいとこも、真面目で変わってるとこも、不器用なとこも全部好き」
「は、は、はいぃ」
「…っあ、俺が怒っていい立場じゃないよね。ごめん、でも分かってほしくて…」
「…いえ!ちゃんと伝わってます。枇杷斗くんの気持ち」
少し体を離して、彼の手をぎゅっと握りました。今度は避けられなかったので、嬉しくて胸がいっぱいです。
「一緒に帰りましょう。家まで送ります!」
「…うん。ありがとう」
「あ、手繋いだままでもいいですか…?」
「ふはっ、それ確認するんだ。いいよ、俺も手繋ぎたい」
手を繋いだまま、僕達は枇杷斗くんの家に向かいました。もう西日も沈んできて、そよ風が心地いいです。
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