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彼女の名前は花野枇杷と言います。僕とは真逆で、名が体を表しているよう。花のような愛らしい雰囲気と、果物の枇杷のように甘酸っぱい顔。黒髪のショートボブヘアが似合っていて、彼女からはいつも甘い香りがしていました。
付き合って1ヶ月が経った頃、僕は彼女のことを《びーちゃん》と呼び、彼女は僕を『えーくん』と呼ぶようになりました。
《な、なんか恋人っぽいです!》
あだ名呼びに浮かれて、連絡先の名前も【びーちゃん】に変更しました。それからは、連絡が来たり電話がかかってくる度に、名前を見て嬉しくなりました。
初めての彼女に戸惑いながらも、徐々に確実にびーちゃんと距離を縮めていく僕。正確に言うと、彼女がどんどん縮めていってくれてるのだと思います。
ヘタレな僕に文句も言わず、いつも明るく笑ってそばに居てくれる。「えーくんのそんな所も好きだよ」と言ってくれる。僕が頑張ろうとしてたら、そっと見守って支えてくれる。
彼女は見た目だけじゃなくて、内面も素敵な子でした。
そして、付き合って3ヶ月目。デートの帰りに、僕は思い切ってびーちゃんと手を繋ごうとその手を握りました。びーちゃんは一瞬驚いたようだったけど、口を引き結んで真っ赤になっている僕を見てぷっと吹き出し、手を握り返してくれました。
もう、あの時はいっぱいいっぱいで…僕を見上げるびーちゃんの顔をしっかり見れなかったです。
《わぁ…僕今、手繋いでる!!ドキドキします…。女の子の手ってこんなに大きくて固いんですね…って、いててて!握力なんか強い…!》
そう思いながら、びーちゃんを最寄り駅まで送っていきました。あの時、バイバイする時のびーちゃんは照れくさそうに気まずそうに笑ってて、今まで見たことない表情でした。
僕はその帰り、嬉しくて嬉しくて…周りに人がいることも気にせずスキップしながら駅へ向かいました。
しかし、だんだん時間が経ち落ち着いていくと…あの時のことで、少し疑問に思いました。
《あれ…今思い返すとびーちゃんの手…僕より大きくなかった?僕手は大きい方なんですが…それに結構固かった…ような》
そう考えましたが、いやいや。男子より手が大きいなんてきっと珍しいことじゃないし、筋肉質な女の子もいるでしょう。と、この時の疑問はすぐに消え去りました。
なにしろ、初めてお付き合いというものをしましたし、ましてや誰かと手を繋ぐなんて中学生から考えても無かったので…女子の感触というものをよく分かっていませんでした。
《それより照れてたびーちゃんも可愛かったです…。珍しくモジモジしながら下向いてて。顔が勝手ににやけちゃいます…》
しかし付き合ってから4ヶ月目。またもや少し気になることが。
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