15 冬

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12月5日、日曜日。今日は特別な日だ。 少し心が苦しくなるこの日に、五十嵐は家にいてくれた。 今日が日曜日で本当に良かった。 いつものように過ごすものの、僕はどこか落ち着かなかった。 別に今日この日が例のあの日ではないのに、12月5日という日付は僕にとって苦しく辛いものだった。 「蓮野、なんかあったのか?」 先生が作ってくれたオムライスを食べながら僕は思わずぼーっと地面を見つめていた。 目の前に本人がいるのにこんなにぼーっとするなんて駄目だ。 折角ここに五十嵐は存在しているのに。 「あ、ごめん。ちょっと考え事」 「お前がそんな真剣に悩み事なんて珍しいな、もしかして神楽兄と何かあったのか?もしくは武田か立花がなんかしたか?」 「いや、そういうんじゃない。ただ先生といつまでこうして一緒にいられるんだろうって思って」 誤魔化すようにそう言って笑えば、五十嵐はじっと僕を見つめた。 なんだか彼にずっと見つめられるとどうしても目を逸らしてしまう。 何故僕の言葉に動きを止めたのだろうか。 そう思いながらゆっくりとオムライスを食べていると先生が口を開いた。 「いつまでとかない。お前が望むならいつまでだって一緒にいていい。勿論出て行きたくなったらそうして構わないし」 「でも…先生はいつか家庭を持つだろうし、ずっとここにいさせてもらう訳にはいかないから…」 「馬鹿だな、そんなこと考えてたのか。お前の意思を優先しろ。それに俺は多分…家庭は持たない」 「え、どうして」 「訳ありでな。今の生活が俺にとって一番幸せなのかもしれないって思ったんだ。こうしてお前と他愛もない話をしながら食事をして、毎日顔を合わせる。今まで経験したことのない幸せを感じるんだよ」 先生の言葉に僕は思わず目を見開いた。 そんなことを思ってくれているとは思わなかった。 僕は先生といられてずっと幸せだったけど、いつか五十嵐の手を離すべきだと思っていたから。 けど先生もこの生活を幸せだと思ってくれていたんだ。 それがあまりに嬉しかった。 「…そんなこと言ったら、調子乗ってずっと居座るからやめろって」 「構わねぇよ、俺やお前に帰る場所があるってのは凄いことなんだ。無理に出ていこうだとか迷惑をかけているだとか思わなくていい。 そんなこと考えるとお前らしくないだろ」 「僕のこと何だと思ってんだよ」 そう言いながらも僕は小さく笑った。 ずっとこうしたかった。 けど時を遡る前の僕は本音を伝える勇気がなくて無理だった。 もしかしたら先生はずっと、逃げ場を作ってくれていたのかもしれない。 それに気づかなかったのは僕だ。 そう思いながら僕は五十嵐に笑いかけた。 この人とまだこの先もずっと一緒にいたい。 一緒に食事をして、アイスを食べて、映画を見て、夜中にお菓子を食べて怒られて…。 そんな日がいつまでも続いて欲しいと思った。 先生がこうして許してくれるなら僕は、まだ彼を一番を近くで見守ろうと思った。
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