〆切

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 時計の音がいつもよりはっきりと聞こえる。そんな気がする。秒針の音が部屋中に響いている。まるで私を急かしているかのように鳴っている。こんなことなら、時計は、音のならないデジタルにすれば良かった。  時間に追われる生活をしなければ、きっと気にならないのだろう。今日中に提出しななければ、ならないのに真っ白だった。パソコンの画面は、真っ白のままだった。書かないといけないことはわかっているのに、何を書いていいのかわからない。ふと時計に目をやると、短針が十時のところにいた。  「この期限、()びてくれないかな。」  そうつぶやいた。誰もいない暗い部屋でつぶやいた。その中でやたら明るい画面に向かってつぶやいた。  もし、期日が延びなくても、この時間がのびてくれればそれだけでよかった。この状態から、二時間以内に提出できる気がしなかった。  それでも、そんなくだらないことを考えていてはだめだと思い直した。それから、大きく伸びをした。そして背筋を伸ばして画面と向き合った。  そしてあれから一時間経って何とか提出することができた。こんなにすぐにできるのなら、もっと早くやればもっとのびのびと過ごすことができたのかもしれない。  提出を終えると、二時間前に締め切りが延長(のば)されていたことを知った。それでも良かった。終わらせることができたから、のんびりと過ごすことができる。先延ばしにしたっていいことなんて何もない。  私は、きっと成長(のびること)が出来たのだから。
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