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魔物はぐるりとあたりを見回しました。
「ねえ、おじいさん。でもわたし、きっといかなくちゃ。こんな綺麗な場所に、わたしなんて似合わないわ」
〈おやおや、そうかな。わしの目には、とてもとっても、よく似合っているように見えるよ〉
また、おじいさんの頭の葉っぱがざわざわと鳴りました。
「そんなことないわ。だってみんな、わたしをきたないっていって嫌がるもの。この痣は、すごくみにくくて、不気味でしょう」
〈おや、そうかい? 夕暮れどきに空に浮かんだ雲のようで、とても綺麗な色じゃないか〉
「みんな、毒みたいな色だって言うわ」
〈それは、その人たちが夕暮れどきの雲の色を知らないんだろう、可愛いお嬢さん〉
今度はゆるやかな優しい風が、肌を撫でるようにそっと吹きました。
血だらけの、ずきずき痛む肌に、ふわりとガーゼを当てるように。
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