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 国王への報告を終え、報酬を受け取った俺はある場所へ向かった。  あの迷宮は、入った人間が生きて出ると、主共々消えるようになっていた。小さな魔物が出入りできたのも、俺が出た時の魔方陣が現れたのもその為だ。それと、この推測が核心に変わったのは、あの歌の歌詞だ。その中に、貴女の幸せの為ならば私は消えても構わない。とある。あの迷宮を出ても良いのは彼女だけで、彼女と一緒にいられる間は、バアルは魔王討伐に来た人間を殺さなければならなかったのだろう。確かに傲慢だが、悪い奴ではないのかもしれない。そう思ってしまうのは、あの歌が嫌いではないからだろう。  国王には歌以外のことを報告した。始めは不思議そうにしていたが、魔王なぞの考えは理解できない。魔王討伐大義であった。との事だった。  因みに。迷宮のあった墓地は、其々の家族が花を生けに来ており、人で溢れていた。たまに魔物側の墓に花が一輪ずつ置いてあることがあるみたいだが、それに害はないからと、人間達は大人しくそれを見守ることにしたらしい。  俺はそっと町外れの小高い丘の上の草原で寝転んだ。真上に広がる青空を雲が静かに流れていくのを眺めながら、俺はあの歌を歌った。風に乗って聞こえていた鎮魂と愛の歌を。
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