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俺には好きな場所がある。
それは、町外れにある小高い丘の上の草原だ。人通りはまず無く、真上に広がる青空を雲が静かに流れていく。草原に寝転びそれを一人で眺めるこの時間が好きだ。そして、この場所を気に入っている一番の理由は、この歌声だ。どこからか、風に乗って知らない歌が聞こえてくる。哀しくて美しいそれは、聞いていてとても心地よかった。
歌っているのはどんな人なのだろう。一度会ってみたい。そう思って国中を探したが、あの歌を知っている者は誰もいなかった。
今日もまた、この場所で聞いている。
少しして町の方から男がやって来た。
「ネイ様。国王がお呼びです」
「そうか……なぁ、この歌知らねぇか?」
俺は男に聞いた。男は耳を澄ませると短く言った。
「知りませんね。どこかの村の歌ですかね?」
「その割にはちゃんと聞こえるだろ?」
俺は上体を起こして聞いた。すると男は笑って答えた。
「ひょっとして風が歌ってるんじゃないですか?」
「そっか」
歌い手がいないのは、風が歌っているからか。とぼんやり納得した。男は前のめりになって言った。
「それよりネイ様。国王がお待ちですよ」
「あぁ、今行く」
俺は立ち上がり、男と共に城に向かった。
国の中央に位置する城へ入り、だだっ広い部屋の立派な椅子に座った国王は、部屋の中央あたりで跪く俺に命じた。
「勇者ネイよ、魔王バアルを討伐せよ」
「承知しました」
俺は返事をして城を出て、国王の出してくれた馬に乗り、国を出た。
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