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十四話
「ねぇ、オレのこと忘れてない〜?」
適当に親子丼を食べていたら、拗ねた様子の奏斗が隣の席に来た。
食堂に入って早々、一人だけ逃げてニヤニヤと見物していた癖に白々しい奴だ。
「奏斗はなに食べる?」
「オレはなんでもいいよぉ。本当はみつるんのこと食べたいんだけどねぇ〜」
「はは・・・俺は食べ物じゃないよ」
「知ってるぅ、そういう意味の"食べたい"じゃないからね〜」
はは・・・食事中に聞きたくない言葉ランキングがあったら、上位に入るレベルの台詞だ。
実際に口内を犯された後に言われると、余計に気分が悪くなる。
「・・・・・・・・・・・」
全ての元凶である転入生を横目で覗く。
奢ると言ったのに、料理を頼む素振りすら無い。
顔を見られるのがそんなに嫌なのか?
「誰だこいつ、光留の友達か?」
「友達ぃ〜? オレとみつるんはもぉ〜と深い仲だけど〜?」
「ほう・・・・・・深い仲か・・・・・・・」
「あんなことやこんなこともした仲だよ〜」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
一体、俺は何を聞かされてるんだ。
生徒会の業務には機密情報が多い。
深い仲と言われればまあそうなのかもしれないが、言い方があるだろ。
「こいつとはどんなことをした仲なんだ?」
「彼は生徒会役員だよ。まだ出会って一ヶ月だけど、強いて言うなら一緒に仕事をした仲かな」
「だそうだ。大した仲じゃないみたいだな」
「みつるん・・・・・・!」
俺の回答に満足したのか、転入生は俺の肩に手を置いて満足げな様子だ。
表情は見えないが、声の具合から笑っていることだけは分かる。
「食べ終わったから俺は戻るよ」
「もう行くんだ?」
立ち上がると同時に、さりげなく腕を退かす。
「仕事が残ってるからね、何か困ったことがあったらここに連絡してよ」
仕事用の電話番号が書かれた名刺を取り出して、転入生に渡す。
どうせ連絡が来ることも無いだろうけど・・・"親切な副会長"ならこの位はしないとな。
「ああ、"困った時"は連絡させてもらうよ」
「・・・・・・・? それじゃあまた」
何か嫌な予感がしたが・・・・・・気のせいか?
俺は奏斗を置いて、早足で生徒会室に戻った。
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