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十五話
予感や勘というものに根拠は無いが、大抵それらは理由があるからこそ感じるものだ。
俺は食堂で感じた嫌な予感が、ただの杞憂や勘違いでは無いことを思い知った。
「体操服持ってきたぞ」
2-Sの教室。
本来は授業免除で行く必要が無い教室に、わざわざ行かなければならない理由が出来た。
視界に入った不審者に向かって、内心イライラしながらも笑顔で体操服を渡す。
「ありがとう。もう戻っていいよ」
「・・・・・・・・・」
引き攣りそうになる口角をどうにか維持して、教室を出る。
自分から呼び出しておいて、用が済んだら帰れって? こっちは仕事を中断して来てんだよ。
「副会長様! 今日も転校生とお話を・・・?」
「うん・・・体操服がまだ届いていないみたいだから、貸してあげたんだよ」
「そうですか! 副会長様はお優しいですね!」
親衛隊に声を掛けられた。その理由はおそらく、俺と転入生の関係を確認する為だ。
転入生が制裁の対象にならないためにも、いつも通り俺の"親切"ということにしておく。
――はぁあああ・・・キレそう・・・・・・。
あの食堂で転入生と話してから三日。
毎日のように転入生から呼び出しを喰らい、その都度ものを貸したり頼み事をされていた。
一日に一度なら、いや、三回や五回ならいつもと変わらないし我慢出来た。
だが、あいつが俺を呼び出す頻度は少なくとも一日で二十回、下手したら四十回は呼ばれている。
会う度に『授業受けてないし教科書も必要ないでしょ?』とか、いちいち煽ってくるのが癪に障る。
「どうされたのですか?」
「・・・・・・・・何でもないよ」
親衛隊の生徒と別れて、生徒会室に戻る。
俺が帰ってきたことに気がついたが悠雅が、呆れたような表情をした。
「お前は断ることも覚えた方が良いぞ。迷惑だから呼ぶなと言ってやれ」
「そんなことしたら転入生が困るだろ? まだ学園に来て日が浅いんだから俺達が助けないと」
「俺の目には嫌がせにしか見えないがな」
それは俺も思っていたことだ。
転入生の俺に対する言動は明らかにおかしい。
いきなりキスしてきたのもそうだが、同級生ではなく俺を頼る理由が分からない。
Sクラスともなれば優秀な人しかいないから、嫌がらせを受けることも無いはずなのに。
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