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レイジ、初めてのファンミーティング
「レ、レイジさん、はじめまして!」
俺の前に立つ男は声を上擦らせてそう言うと勢いよく頭を下げる。一礼した拍子にずり落ちそうになった眼鏡を中指で押さえると男は興奮した様子で視線をさ迷わせる。
「落ち着け。」
「は、はいっ!やべぇ優し〜〜〜。」
長テーブル越しに俺が言っても、男の興奮は冷めやらない。
この男もそうだが、何を言ったところで俺の一挙手一投足を喜ぶのがファンなんだろうか。
物好き共め。
思わず溜息を吐きそうになった。
俺と男がいるのはオフィスビルの二階にある会議室。普段なら目的に添って会議が開かれるこの場所は今日は全く別のことに使われている。
『初!鮮血のレイジ ファンミーティング!』
俺の背にはなんとも直球でありきたりなイベント名を謳うホワイトボードがある。
ウィングノーツ中心街に程近いライトプール区。
都市きっての繁華街であるここには株式会社レジーナ・グループのウィングノーツ支部が構えるオフィスビルがある。
表向きはスポーツ観戦を行うスタジアムやカジノ、飲食店を運営している会社ということになっているレジーナ・グループだが本当の顔は裏闘技場や闇カジノを世界規模に渡って運営するギャング組織である。
レジーナ・グループの正式名称は"レジーナ・ロンド"。
俺はお目見えしたことがないが、なんでもボスは俺とたいして歳の変わらない女らしい。
聞いた話によるとその女は法外で得た金で幾つもの慈善事業を起ち上げており、その姿をギャングスターとして崇めている者もいるとか。
汚れた金じゃないと、世界は救えないってか?
馬鹿馬鹿しい。何のためにそんなことをしてるのかは分からないが誰かを救うために自らの手を汚すとは奇特な人間がいるもんだ。
まぁ表社会で生きられない俺みたいなサメを裏闘技場の戦闘員として拾ってくれたのもこの女が支配人を務める『レジーナ・ロンド・アクア』なのだから俺もそいつに救われた一人であるのかも知れない。
件の『レジーナ・ロンド・アクア』があるのはレジーナ・グループ ウィングノーツ支部のビルディングの地下。
そこでは夜な夜な、闘技場に所属する俺達戦闘員同士の試合であったり戦闘員に闘いを申し込む外部からの挑戦者達による試合が繰り広げられている。
モザイク処理一切無しの生身の闘いだ。現代では味わえないスリルを愉しむため、そして一夜で大金を掴むために闘技場には運営の示す一定条件を満たした選ばれた観客達がやって来る。
こんなところに娯楽のために来るような奴らだ。観客共は揃いも揃って下品でイかれていて、どいつもこいつも何かに飢えている。
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