3章

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(なんだか、急につまらなくなってきたな)  この世界に転生したと気づいてから、ジャックの救世主になることを夢みてきた。それが、こんな幕引きになるとは思わなかった。  お湯を頭からかぶり、私は邪念を払うようにお風呂からあがる。服を着て、ふと鏡を見た時、私は自分の顔に目を見開いた。 「な、なんじゃこれ!」  私は両手で顔をおさえ、腹の底から叫び声をあげた。 「どうした! ……その仮面は!」  悲鳴のような声を聞きつけ、ジャックが洗面所に飛び込んできた。彼の顔を見て、私はわなわなと震える指を彼の顔に向ける。 「ジャックこそ、仮面が」 「仮面がどうかしたのか?」  ジャックは鏡に顔を向けると、ぽかんと口を開いた。彼の顔を隠していた仮面が、右半分だけ剥がれ落ちている。  その剥がれ落ちた右半分が乗り移ったように、私の顔の右側にも仮面がくっついていた。仮面を外そうと引っ張ってみても、皮膚にはり付いたように外れない。 「どうなっている?」  お互いに鏡を見ながら、私とジャックはぺたぺたと顔を触った。  まさかこれは、私が半分だけ殺人鬼になったということだろうか。確かに、隣の男よりも私の方が殺人鬼に向いている。 「……うーん、なんかちょっと嬉しいかも。ジャックとお揃いだ」 「お揃いだ――じゃ、ないんだよ、君! なにをのんきなことを言っているんだ」  また、ジャックは頭を掻きむしりながら悶え始めた。仮面がなくなり、高く骨ばった鼻筋も飢えた獣のような目も、はっきり今は見える。  顔面蒼白のジャックの背中を、どうどうと馬をなだめるように私は撫でた。 「つまり、私は半分殺人鬼役に足を突っ込んだってことでしょ? それって、かなり私たちにとって有利なことだよ。だって、敵を二人で迎え撃つ準備ができたってことでしょ」  体を丸めて唸っているジャックの背中を叩き、私は彼の半分残った仮面に触れる。紛れもない殺人鬼の証をなぞると、ジャックが身震いした。 「それに、ジャックの業を半分背負えたんだから、私にとっては嬉しいことだよ」 「それなら僕は、君の業を半分背負ったってことか?」  ジャックがファイナルガール。想像すると、なんだかしっくりくる。正義感が強くてまじめで正直者。映画のノアと同じだ。
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