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(たしかに、解釈違いだな……)  私はファイナルガールでもなければ、殺人鬼でもない。ジャックだってそうだ。それなら、誰がこの物語を終わらせられるのだろうか。  ジャックのことなどいないように、私の首にかかった縄を目の前にいた処刑人の男が引き上げた。足先が浮き、縄が首に食い込む感触に、肌が粟立つ。  それを見て、ジャックは処刑人を突き飛ばす。彼は斧を振り上げ、ピンと張った縄に向かって振りぬく。  縄に刃が当たったとたん、斧が土くれのように崩れ落ちた。この世界の神は、私を殺すと決めたらしい。ファイナルガールの介入などできないようだ。 「勝手に終わらせない……!」  ジャックは胸元のポケットから、私が渡したナイフを取り出した。 「君のことをずっと見てきたんだ。本当は君のことが好きでした!」  嘘がつけない彼の本当の言葉が彼から放たれ、ナイフが縄を断ち切った。  締め付けられていた首が自由になり、息が楽になる。同時に、視界が急に開けた。足元を見ると、仮面の半分が落ちていた。  目の前のジャックの顔には、半分だけの仮面が復活している。半分だけの仮面は、お互いの役割を背負いあった証だと、彼が誇らしげに言っていたのを思い出し、私は口角を引き上げた。 「貴方が守りたいものは全て守ってあげるって、約束したんだっけ。その中に、私だって入ってるってことは、ちゃんと守らないとだめだよね」  胸倉をつかみ、私はジャックの顔をひきよせる。彼の唇に自分のそれを重ね、そっと胸元から手を離した。  半分ずつの二つの仮面が、処刑台に落ちて割れた。 「これで、お話は完結! ノアと殺人鬼ジャックは結ばれ、駆け落ちするのでした」  私は宣言するように言い放ち、目を丸くして固まるジャックの背中に手を回した。彼を横抱きにし、処刑台を飛び降りる。  頬に冷たいものが当たり、視線を上げた。快晴の空から、しとしとと雨粒が落ちてくる。そういえば、この映画の終わりには、雨が降るのだった。  雨に濡れながら、駆け抜け、この世界の終わりへ向かう。仮面がなくなったからか、私たちを追いかける人たちはいなかった。  永遠に続く終わりのような暗闇に飛び込むと、深い眠りにつくように意識が遠のいていった。
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