2章

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「彼らが死んだら、君のせいだぞ」 「勝手に死ねばいいのに。その方が手間が省ける」 「なんてことを……!」  信じられないモノでも見たように、ジャックは片手で仮面を覆い、私から距離をとる。 「僕に近づかないでくれ」 「はいはい、分かりましたよ」  空いた手を突き出され、私は両手を上げる。これでは、どっちが殺人鬼だか分からない。 「殺してほしいって、懇願したのはそっちのくせに」 「懇願などしていない。僕はこの物語を終わらせたかっただけだ」  ジャックはぼろぼろのカーテンを閉め、目隠しをしていく。  カビの生えたカーテンが揺れる度に、不快な悪臭が広がり、私は顔をしかめた。 (こんなことしたって、意味ないのに)  ジャックの言うことが正しいなら、きっとこの小屋もすぐに見つかるはずだ。そうなれば、またさっきのような騒ぎになる。  そして人が死に、すべての罪がジャックに着せられる。私があの場所で彼を殺さなかったせいで、映画の筋書きが狂っていく。  私は一度開けた窓を閉めようとしたが、建つけが悪いのか、途中で動かなくなった。窓の隙間から吹き込んだ風が、鼻をかすめる。湿気た風は陰気だが、小屋の空気よりはマシだ。  腰に下げたポーチからマッチを出すと、なんとか暖炉に火をつけ、私はまとっていたマントを脱ぐ。皮の椅子にそれを敷いて腰を落とすと、ようやく一息ついた。 「仮面、はずさないの?」  窓際で外の様子をうかがっていたジャックに話しかけると、彼はそっとカーテンを閉めた。 「これは、外れないんだ」 「外れない?」  私が訊き返すと、彼は顔を覆う白い仮面に触れた。  白い仮面は殺人鬼ジャックのトレードマークだ。仮面を付けた男が、夜な夜な連続殺人を繰り返す。ラストに近づくと常に仮面を付けていたが、外せないなんて設定は聞いたことがない。
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