この世界に青い妖精はいない

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 その翌日より、日野と同じ症状の者達が全国各地の病院を訪れるようになった。 彼らは皆「唐突に鼻が伸びた」と言う。その唐突がどういったタイミングであるかのヒアリングを行ってみれば、皆「嘘を()いた」時に起こったとのこと。 鼻が伸びた者の主な職業は、営業職・接客業・教師・政治家・反社会的団体・俳優・脚本家・小説家などなどなど…… 善悪の差こそあれ、嘘を()く仕事ばかり。 彼らは皆、普通に仕事をしているだけで鼻が伸びるようになってしまったのである。 一度伸びた鼻は戻ることはないし、しばらくしても戻ることはない。 一回の嘘で一センチから二センチ程度伸びるとされている。 その嘘も判定が広く、お世辞や社交辞令や建前や冗談。これらも広義の意味で言えば「嘘」にあたり、口に出したり書いたりした時点で鼻が伸びてしまうのである。 先述の嘘を()く仕事の者は瞬く間に何十センチへと達してしまう。 ここまで伸びすぎると日常生活に支障を来すために、仕事を辞めたりなどで嘘を()くことをやめるのであった。 実際、どこまで鼻が伸びるのかの検証を行う者はいない。  そして、その病症は世界中で発生していることが発覚。世界中の医療機関がその原因を突き止めようとしたのだが、梨の礫。全く以て原因不明。 ただ、鼻が伸びるだけで命には関わらないために原因を突き止めることに価値はないとされ研究は打ち切りとなった。その打ち切り前に、病症に名前だけは付けられている。 嘘を()くと鼻が伸びる病症そのままに「ピノキオ病」である。
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