この世界に青い妖精はいない

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 今や、この世界中に鼻が伸びてない者は物心つかない赤子や本当に嘘を吐いたことのない聖人君子を除けば誰もいない。前者も物心がつき人と会話をするようになった後はいつの間にか鼻が伸びるようになる始末。 嘘を()けば、鼻が伸びる。これが世界の概念、人類全てがピノキオ病患者となってしまったのである。 これにより、新たなる価値観が生まれた。人々は鼻の長さを競い合うようになってしまったのだ。  嘘を()けば、鼻が伸びる。逆に鼻が短ければ「嘘を吐かない正直者」として尊敬を集め、高い社会的地位(ステイタス)を得るようになってしまった。ただ、お世辞や社交辞令や建前が言えない正直者であるために尊敬の反面「口が悪い奴」と嫌う者が多いことも忘れてはならない。それがお互いがお互いを差別の感情を覚えるようになるまで時間はかからなかった。  それにより、世界の人々は「鼻の短い正直者」と「鼻の長い嘘吐(うそつ)き」とで二分されてしまう。現状では後者の方が圧倒的多数であるところ「人は嘘を()かずにはいられない」生態である証左と言えるだろう。
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